「問題」は個人のせいじゃない。家系的な価値観の“継承システム”に気づく
私たちは、自分の価値観は自分の経験や考えで築いたものだと思っています。もちろんそれは事実ですが、実はもう一つの大きな影響源があります。
それが「家系的な価値観」です。
祖父母から親へ、親から子へ、そしてまたその子へと、家族の中で脈々と受け継がれていく、独自のルールや考え方、そして「常識」のことです。
リソースの少ない子どもが選ぶ「最善の行動」
家庭内で何かトラブルが起きたとき、その原因が子どもの行動にあった場合、「この子に問題がある」と個人に原因があると結論づけられがちです。
ですが、ここで立ち止まって考えてみましょう。
子どもは、家族というシステムの中で、リソース(心のエネルギー、選択肢、発言権)が最も少ない状態にいます。
その少ないリソースの中で、親や周囲の大人から流れ込んでくる「家系的な価値観」や「期待」といった影響を受けます。その結果、子どもは限られた選択肢の中から、その時の自分にとっての「最善の行動」を選びます。
これは、生存戦略のようなものです。
だからこそ、お子さんのサポートをしても、家庭に戻るとまた同じことの繰り返しになってしまうことがあります。なぜなら、問題(とされてしまう事柄)は子どもの「個」にあるのではなく、その背景で構築されている「関係性」にあるからです。
「自分だけが正しい」という壁を越える
この継承のサイクルを良い方向に変えていくために、私たちがすべきことは、自分の価値観のルーツを観ていくことです。
- 「私の中にある『〜すべき』という強い思いは、どこから来たのだろう?」
- 「両親や祖父母は、この問題に対してどんな価値観を持っていたのだろう?」
特に注意が必要なのは、「自分だけは正しくて、周りが誤っている」と強く思い込んでいる人です。その「正しさ」の強さこそが、もしかすると、無意識のうちに継承された、見直すべき家系的な価値観かもしれません。
この継承システムは、どこかで誰かが気づいて観ていかないと、無自覚に次の世代へと受け継がれていってしまいます。
自分の価値観のルーツを見つめ直すことが、子どもを責めることをやめ、家族全体の関係性をより温かいものに変えていくための、確実な一歩となります。

