一番難しく、一番大切な「自分を知る」という実践

心理学者の加藤諦三さんは、次のような言葉を残しています。

一番難しいのは「自分を知ること」
一番簡単なのは「他者を批判すること」

この言葉は、日々の生活の中で私たちが無意識に選びがちな行動の本質を突いています。なぜ「自分を知る」ことはこれほどまでに難しく、「他者を批判する」ことはこれほどまでに容易なのでしょうか。

なぜ自分を知ることは「痛み」を伴うのか

自分を知るというプロセスは、単に自分の長所を見つけることではありません。むしろ、自分自身で観たくない部分、つまり「抑圧してきた感情」や「理想とは程遠い自分」と正面から向き合う作業を指します。

欠点や弱さを認め、受け入れることには、どうしても痛みや苦しみが伴います。人間は本能的に不快な体験を回避しようとするため、無意識のうちに自分自身から目を背けてしまうのです。自分を直視することは、それほどまでに困難な挑戦と言えます。

他者批判という「逃げ道」の罠

一方で、他者を批判することは非常に簡単です。誰かを否定したり非難したりしている間は、自分の内面にある問題から目を逸らすことができるからです。

「自分の観たくない自分」を誰かのせいにすることで、一時的には心が楽になったように感じるかもしれません。否定や批判を通じて何かを肯定する手法は、短期的には自分を守る盾になります。

しかし、このやり方では、結果的に自分を本当の意味で満たすことはできません。むしろ、他者を否定し続けることは、巡り巡ってさらに自分自身を否定することに繋がってしまうのです。

「Well-doing」から「Well-being」へ

「やるべきことをこなす」というWell-doingの生き方であれば、他者を批判しながらでも、形の上では進んでいけるかもしれません。

しかし、自分らしく、心豊かに生きるWell-beingを実現するためには、避けては通れない道があります。それは、痛みを伴っても「自分を知る」ことであり、同時に「他者を知る」ことです。

自分を深く理解し、その上で他者も尊重していく。こうした「肯定の実践」こそが、自分自身を活かして生きていくための唯一の鍵となります。